【12.06.27】社会保障と税一体改革の採決強行に強く抗議する
仲野智 中央書記長談話が発表されました(全文掲載)
6月26日、午前中に行われた衆議院特別委員会、引き続き行われた衆議院本会議で、民主・自民・公明3党の賛成多数で「社会保障と税一体改革」関連法案および社会保障制度改革推進法案が可決し、参議院に送付された。各マスコミの世論調査でも消費税増税に反対する声が過半数のなか、国民の声も、議会制民主主義を蹂躙した3党の密室談合、衆議院での採決強行に怒りをもって強く抗議する。
「社会保障と税一体改革」関連7法案の審議は国民生活にかかわる重要な法案にもかかわらず、7法案あわせて約130時間しか行われていない。さらに、国会審議や地方公聴会と同時進行で行われた3党協議による修正案の審議はほとんど行われていない。修正案とあわせて提出された「社会保障制度改革推進法案」は、今後の社会保障のあり方を方向付ける事実上の「基本法」という位置をもっているだけに、憲法25条を否定する反国民的内容は断じて認められない。社会保障への国の責任放棄に対し、日弁連も会長声明で強く批判している。
「社会保障制度改革推進法」は、社会保障の基本を「自立を家族相互、国民相互の助け合いの仕組みを通じて支援」と規定して、「自己責任」を一層強化。社会保障への公費削減をめざし、社会保障給付の重点化・効率化のもと、医療・介護での保険適用範囲の限定(縮小)、生活保護の改悪などを打ち出している。また、社会保障の財源として消費税を福祉目的税化し、「増税か社会保障の切り捨てか」の選択を国民に強要する一方で、大企業へのさらなる減税や優遇措置を検討している。いまわが国がめざすべきは、担税能力のある法人や富裕層への課税強化と、権利としての社会保障・社会福祉の拡充である。格差拡大を助長する消費税増税と社会保障切り捨てを決して認めるわけにはいかない。
「修正」された子ども・子育て新システム関連法案もその問題点は何ら解決されていない。直接契約・直接補助制度の導入はそのままに、要保育度認定にもとづき保育の必要性が認められた場合に保育を利用することになる。民間保育所については、限定的・特例的に市町村の保育実施義務を残したと見ることができ、修正案は(1)直接契約制度を導入し自治体の実施責任をなくす(2)補助金を保育所への補助ではなく利用者への補助に変える(現物給付から現金給付へ)(3)国・自治体の補助対象範囲を限定し利用者負担を増やすなどは残ったままであり、「権利としての福祉」を破壊し「福祉を商品化」しようとする国・厚労省の狙いがさらに進んだ内容で強行されている。
審議をとおして保育士の処遇改善の必要性が認められたにもかかわらず、修正案では人材確保対策が何も述べられていない。子どもの安全を守り成長発達を保障する権利としての保育には、保育所で働く労働者の処遇改善が不可欠である。実効ある人材確保対策を求め運動を強めなければならない。
民主党のマニュフェストであった、最低保障年金の創設や後期高齢者医療制度廃止は「社会保障制度改革国民会議」へ、所得税の最高税率の引き上げや相続税の拡大など、わずかばかりの富裕層への課税強化は来年度の税制改正に先送りするなど、庶民負担のみを強化する「消費税増税まずありき」の談合を私たちは決して許さない。今なお生活再建のメドも復旧の見通しももてない被災地への支援は後回しに、今年度予算の財源確保に必要な特例公債法や、違憲状態を解消する選挙制度改革より消費税増税を優先した野田内閣にこの国の舵取りをする資格はない。
舞台を参議院に移し「社会保障と税一体改革」の審議は続く。野田首相退陣、「解散して国民の信を問え」の声とともに、国民の権利としての福祉を投げ捨て、福祉の商品化を進める「社会保障と税一体改革」「子ども・子育て新システム」「社会保障制度改革推進法案」の廃案に向け、最後までたたかい抜くことを呼びかける。